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演劇ネタ2

「では、主役の曽根 八手さん、乃村 蓮さん、安西 オメガさん、双真 薫さん、友田コナツさん、竹川梅子さん、山村サチさんは、裏方以上きつい仕事になるこのできっちり練習すること。いいわね。」
劇団フィラデルフィア主催の劇『7TABOO』東京公演オーディション結果発表の終盤、演出家である種田 李沙はそう言い放った。
皆がうなずこうとしたその時、前方にいた一人の金髪女が彼女に怒鳴り散らした。
「ちょっと、どーゆー事よ!?なんで私が主役じゃないの!?」
彼女の名は阪本 マリ子。第2章の主人公・仁科 葵役のオーディションを受けたものの、主人公の座を八手に奪われたのだった。
「でもアンタ、役もらったじゃないさ。それだけでも十分じゃないのさ。李沙に感謝しなさいよ」
第2章の朋子の取り巻き1役の新田 昂のこの発言で、マリ子はカチンと来た。
「脇役は黙ってらっしゃい!!」
「黙るのはあんたのほうよ!」
昴はマリ子の方に向かってほえた。灰皿が隣にいた
と、そこへトイレに行ってた裏方のサンカクノスケが戻ってきてこう言った。
「あれー?2人とも何もめてんですか?ねえ、レンさん、阪本さんどんな役もらったんですか?」
蓮は双真 牧夫にだけ聞こえるようにこう答えた。
「のいじめっ子、葉鳥朋子役。そこだけ誰もやろうとしなかったから、阪本さんがその役をやることになってこの様なの。」
双真 牧夫は周りに聞こえるぐらいの声でこういった。
「だったら、それでいいじゃないですか。」
この発言がマリ子の怒りに油を注いだ。
「おだまり!!」
マリ子は牧夫のほほをひっぱたたいた。
この様を見ても動じない種田に、第3章の役の新橋 古夫がおどおどと聞いてきた。
「あのーキャストー変えない…。」
新橋が「ん」の字を言う前に彼女はきっぱりと、「よっぽどじゃない限りキャストは変えないわ。いいわね2人とも。」と言った。
昴とマリ子は納得のいかない顔をした。
こうして見ると、事態は一見収まったかのように見えた。
しかし、マリ子はその後毎日丑の刻参りをしたがまったく怒りが収まらず、リハーサル当日、劇団の入ったビルの入り口にやってきた八手を待ち構えていた。当の八手はマリ子の存在などまったく気づいていなかった。
八手がエレベータのボタンを押そうとした次の瞬間、マリ子は八手を殴って気絶させた。
 
気がついた八手は、自分が闇の中にいることに気づいた。
「ここ…どこだろう…?」
手を動かしていると、何かに触れたと同時に、光がついた。懐中電灯だった。適当にぐるぐると光を回していると、壁に「ここから出して」という赤い文字が見えた。しかもそれはだんだん増えていった。
最初、彼女は怖いと思った。しかし、部屋の中から血のにおいがしてきた。字の主を助けたいと思った彼女は、ドアをどんどんとたたいた。
そのころ、種田たちは第1章のリハーサルを済ませていた。
「どうします、種田さん?」
「いったん30分間の休憩にして、休憩終わっても彼女が来なかったら戻ってくるまで第3章から始めてちょうだい。」
と、そこへマリ子が言ってきた。
「ねえ、どうせ彼女こないんだし、葵のオーディションやり直したほうがいいんじゃない?」
種田は抑揚なしにこう答えた。
「あの子には、あの役が一番なのよ。青いって学級委員って設定だったでしょ?それに、彼女は芝居をすっぽかすような女じゃない。絶対彼女は来る。」
マリ子は自分自身のエゴに操られている己を恥じた。
同じころ、リトル小川はいたずらをしに道具庫のドアを開いた。
中では、八手が彼に光を向けていた。
「大丈夫か!?」
「うん、それよりこの部屋に誰かいるの。その誰かを助けてあげて…。」
八手の気がおかしくなったのかと思ったリトルは、種田を呼んだ。
「やっぱこいつおろしたほうがいいんじゃないすか?」
しかし、種田はリトルの予想外の発言をした。
「ねえ、その誰かって、『ここから出して』なんて書いてなかった?」
八手はうなずいた。
「どういうことっすか?」
「とにかくリハーサル中断してお祓いしてもらいましょ。」
お祓いはきちんとしてもらった。
お祓いしてくださった神主の話によると、道具庫の字を書いたのは、20年前、八手と同じ目にあって、死んでしまった女優の卵だったとのこと。かわいそうに、彼女はまだ息があって知らない間に役を降ろされてしまったのだ。
まもなく、道具庫から、小さな、女性のものと思われる服を着た骸骨がいくつか出てきた。
骸骨は八手の服を引っ張ったかとおもうと、手を離したとたんに動かなくなった。
「今、何か言ってなかった?」
蓮は恐る恐る昂に尋ねた。
「うん……ヒロイン、ヒロインって…。」
マリ子は一粒涙を落とした。
「きっと、私のような思いを抱えてたんだろうね。」
マリ子はそうつぶやいた。
八手は「?」という顔をした。
マリ子は優しい顔で「ううん、何でもない。さっきはごめん」
八手も優しい顔で「ううん。いいよ。」と返した。

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