バトンを基にしたイラストの続き。
ファンフィクションで、TF×パラッパ。
幽霊物です。
12・6、修正
一夜限りのライブの後、パラッパは写真屋へ現像してもらいに行った。
現像してもらった後、写真屋のおばさんは、妙な顔をしてパラッパに写真を渡した。
「うまく写らなかったんですか?」
「そう言われれば、そうなるねえ」
おばさんの言葉を理解できないパラッパだったが、家に帰って写真を見て、衝撃を覚えながらもおばさんの言葉をここで理解した。
なんと、ライブのときベースを弾いていたであろうスタースクリームの姿がなく、ある部分で弦が途切れたベースだけが宙に浮いていたのだった。もしやと思い、他の写真も調べたところ、写真の中のスタースクリームはどれも、体が透けていたり体が宙に浮いていたりで、もっとひどいのは彼自身の姿が映っておらず、ただベースだけが観客の頭上や他のメンバーの胸の前や足元に浮いていたのであった。
スタースクリームの存在の曖昧さという恐怖に襲われたとき、初めて握手したときのホログラムを触ったときとは違った奇妙な感覚がよみがえった。
それでも、パラッパは友人であるマットに相談した。信じてもらえないだろうと思ったが、信じてもらえたのでびっくりした。
2人で話し合った結果、スタースクリームの写っていない写真だけを焼き増しして渡すことに決めた。が、ここで新たな問題が発生した。サウンドウェーブとウラミーがきちんと写っている写真は、どれも、どこかに必ずスタースクリームが写っていたり、ベースがひとりでに浮いていたりするのだった。
「まずいなあ。ピンボケしているやつを持っていくわけには…」
パラッパは頭を抱えた。
「………やっぱり、幽霊つきでもいいから、きちんとした写真を持っていくべきだと思う…」
マットは沈んだ声でそう言った。
「というわけで、きちんと写ってるのは幽霊がついているけど、いいかなあ?」
デストロン軍団のうち、THE DECEPTICONZのメンバーを近所の公園に集め、他のメンバーに写真を渡した後、パラッパはギタリストのウラミーとヴォーカルのサウンドウェーブに尋ねた。
「とりあえず見せて」
ウラミーは表情を変えずにパラッパから写真を受け取った後、ざっと見て、これぐらい私は平気よ、と写真を鍵盤のプリントが入ったトートバッグの中へ入れた。
サウンドウェーブは写真を受け取った後、ざっと見てこう言った。
「奴ガ幽霊ダトイウコトハ、皆知ッテイル」
パラッパはびっくりした。THE DECEPTICONZのメンバーは皆スタースクリームに対して普通に接していたため、パラッパはスタースクリームが幽霊だったことはまったく気づかなかったのだ。後でわかったのだが、パラッパだけでなく、PJやラミー、そして他の観客たちもスタースクリームが幽霊であることにまったく気づかなかったのだった。
「えっ、えっ、どういうこと!?何でスタースクリームは死んだの!?」
「奴ハガルバトロン様ニヨッテ処刑サレタ。」
処刑―その言葉にパラッパは恐ろしさを感じた。
「しょ、処刑!?」
「ソウダ、奴ハ度々メガトロン様ニ刃向カッテハ降参シテイタガ、アル時メガトロン様ヲ追放シテ新タナル破壊大帝ノ座に着イタガ、『ガルバトロン』様ニパワーアップシタメガトロン様ニ破壊光線ヲ浴ビテ塵ニ帰サレル刑ヲ受ケタノダ。」
パラッパは恐ろしい話を聞いた気分だった。ステージで陽気にボンボンとベースを演奏していたスタースクリームにそんなショッキングな最期があったなんて。もしも自分がデストロン軍団の一員だったら、ガルバトロンとかいう人物には絶対刃向かいたくないと思った。
「ソレカラ何故奴ガ化ケテ出テクルコトガデキタカハ俺ニハワカラナイ。シカシ俺ハ思フ。奴ハ手段ヲ選バナイ。ソウ、化ケテ誰カニ憑依シヨウトシテデモ…。」
サウンドウェーブは日光の加減も加わってか、パラッパの瞳には恐ろしい語り部として映った。
「哀れで愚かな奴ね、そいつ。」
沈黙を破ったのはウラミーだった。
「だって、ずっと成仏できないんでしょ、そのガルバトロンとかいう奴のイスを自分で乗っ取るかその野望をあきらめない限り。」
確かにそうだ。早くそんな野望をあきらめたほうが楽になれるのに。そうパラッパは思った。
「奴ハスグニアキラメルヨウナ男デハナイ。モシソウダッタラ、奴ハトックニアキラメテイテ今ココニ幽霊トシテデハナク、生身ノトランスフォーマートシテ存在シテイルカ、モシクハ戦死シテイテ存在シテイナイハズダ。」
サウンドウェーブがいきなり言い出すので、パラッパはびっくりした。
「言い忘れてたけど、兄貴、思ったことはお見通しなんだ。」
フレンジーがサウンドウェーブの足元からひょっこりと出てきた。
「まあ、せいぜい早くその愚かな野望をあきらめて成仏できることを祈るぜ、航空参謀スタースクリームよお。」
フレンジーは空を見上げながら言った。
一同の目に、薄く、透き通った、だけど戦闘機としては派手な色使いのF15が、パラッパが持っていた写真屋の紙袋の中から写真を吸い上げながら青空の中を横切る姿が見えた。
完
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あとがき
何故航空参謀は仮装の必要がないのか一言で言えばよいのに、わざわざこんな理由をつけてしまってごめんなさい。
その後で、とタイトルにあるから、ゆっくり話が書けました。今まで怪奇物は書いてきたけど、ファンフィクションは初めてだと思います。
ちなみに、パラッパタウンの住人で、スタースクリームの安否をわかっている人物なんて、ほとんどいないんです。
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