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昼休み―3年2組の教室は、高慢な笑い声と、大声に包まれた。
「オレ様は全県模試1位でしかも満点だぞう、アーヒャッヒャッヒャッ」
自慢していたのはこのクラスの王様的存在の鍵沢富雄だ。金持ちの息子である上に、文武両道である。
ここで自慢話を聞きたくないからと、無視したり、耳をふさいだり、大声を上げたり、吐くそぶりをしたり、教室を出ようとすると、男女問わず彼にぶちのめされる。なので、ふりでも構わずみんな聞かざるを得ないのである。
そんなある日、隣の1組を代表して水帆から苦情を受けた。おまけに、そのとき見せびらかしていた答案用紙をビリビリに裂かれた。当然ぼこぼこにしてやった。でも、彼はなかなか出て行かなかった。
「見せびらかすのやめるとみんなの前で誓うまで俺っちはここから出ないからな!!」
「おいおい近所迷惑だぞ!!」
「それはこっちのせりふだね。」
「そうだそうだ」と2組の連中ははやし立てた。
「生意気だなてめえ。」
でも、チャイムが鳴ってやっと出て行った。
その日以来、富雄が見せびらかそうとするだけでみなに白眼視されるようになった。しばらくはその連中を無視して自慢し続けていたし、教室を抜けようとしたり喚こうとした奴はボコボコにしていった。でも、その白眼視はだんだんエスカレートしていって、テストを見せびらかしていないどころか、給食のときにまで行われるようになった。
我慢できなくなった富雄は放課後のトイレに立てこもり鏡の前に立ってまで点数自慢をするようになった。
後日その話を聞いた水帆の友人辰二郎は、彼にこう尋ねた。
「ねえ、富雄大丈夫かなあ。確かうちの学校のトイレの鏡の前でいかなる点数でも自慢しちゃいけないんじゃなかったんじゃない?」
しかし水帆は
「それって自慢した奴が鏡の中に引きずり込まれるってオチだったんろ?でも現にあいつはここにいる。ってこった、その伝説嘘かも知んないぜ?」
と涼しげな顔をしていた。

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