死体の身元は、浮元志穂という94年から行方不明になっていた少女だということがわかった。
でも、サカモトイマコが誰だかわからなかった。
手がかりもないまま、1ヵ月後、劇団フィラデルフィア『7TABOO』の千葉公演の日が来てしまった。
今が冬休みだけあって、ギャラリーは学生がたくさんいた。その中には美亜とその友人である高松祐太、祐太の友人である戸部孝也がいた。
「とうとう劇場も高校生3人で1000円かあ。」
孝也は看板の小さなマークを見てつぶやいた。
「劇場も大変だねえ。」
祐太はマフラーをいじりながら答えた。
「今日は仕事のために来て、貴方達は私の付き添いなのよ。遊びできたんじゃないんだから。」
美亜は口を尖らせた。そんな表情が可愛いと、祐太は思った。
「お、わりいわりい。遅くなっちまった。」
金髪男―美亜の恋人である植田梓の出現で、祐太は一気に不機嫌になった。
「あ、植田センセー♪」
「俺も手伝いに来たぜ」
「本当はリトルさん目当てでしょう?」
「はは。ばれたか。マブダチのはぜひ見ておかないとな。」
劇も無事に終わり、出演者達は地元のテレビ局に囲まれていた。
「よっ、リトルうまくいってたぞ☆」梓は遠くから親指を上に上げていた。
「ヒャハ♪うれしーぜ☆」リトルはにっと笑って梓と同じことをした。
「蓮さーん、山風ルイサを演じてみて同でしたか?」
「あー、おしとやかさを保つのは大変だったけど、とてもやりがいを感じました。」
と、そこへ一人の女がカメラを押しのけて蓮に接近した。
「ねえ蓮さんサイン頂戴!!」
周りの連中は困惑していた。
「すいません、まだ会見は…。」
「うっさいわねえ!!あんた蓮さんにフラッシュ当てすぎよ!!」
彼女は報道陣に対してほえた。それと矛盾するかのごとく、右手のサイン色紙の角は蓮を刺していた。
蓮は仕方なく、サインを書いた。
「えーとお名前は…。」
「阪本今子よ。今は今日の今よ。」
女―今子は俗に言う“セレブスタイル”だった。ヒョウ柄の毛皮のコートに、黒スカート、網タイツ、赤キャミ黒ハイヒールだった。
蓮はあれえとは思ったが、サインを書き終えた。
今子がサインを受け取ろうとしたその時だった。彼女のたてロールヘアがひとりでに、まるで大根を抜くように、体躯を持ち上げ、そのまま地面に顔を叩きつけた。
「何すんの!?」今子は先ほどの衝撃で今子は歯を折ったが、憤怒の表情はよくわかった。今子の目の前には怯えるギャラリー…いや、一人のぱっちり目の白ロリータガールが立っていた。
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