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「こういう静かな海っていいよなあ」
僕は側に座っていた清美に声を掛けた。
「まあね。人の多い海も好きだけど」
僕たち二人は目の前の景色を楽しんだり、海水を掛け合ったりした。男二人と聞くと空しいかもしれないけど、僕たちにとってはそうは感じなかった。
僕たちが貝殻を拾っていた、その時だった。
大きな波が僕たちを飲み込んだ。
清美はすぐに助かったが、僕は沖まで流された。
その場にいたサーファーが僕の方に向かって行くのが見えた。

泳ぎのうまくない僕は、常に立ち泳ぎ状態だった。

「ゆうちゃーん、頑張ってぇ」

清美の声がした。僕は手を振ろうとした。しかし力尽きたみたいだ。体が沈んでいく。

―いや、何かが僕を持ち上げている。波なのか?―いや、違う、手だ白い手が僕を運んでいるのだ。

手は僕を持ち上げながら、波打ち際まで運んだ。

「ゆうちゃん

ああ、キヨが暖かいからだで僕を抱く。
キヨの涙が僕の体に降り懸かる。


「よかったな、お前、生きてて」
サーファーの目は泪で潤んでいた


ふと、土産屋の建物に目をやると、建物の側に小さな祠があった。
二人で近付いて見ると、道祖神の様だった。
土産物屋のおばちゃんの話によると、死者の多かったこの海に、祠をたてたらぱたりとでなくなったとのことだった。

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