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あるある事件と、新聞の投書欄を見て思いつきました。
死にネタ・グロテスクネタあり。(下ネタや暴力ネタもあるかもしれません。)

また、本編中の登場人物等はすべて架空のものです。

あと、タレント・テレビ局・製作者等の名誉を傷つけるつもりはありません。


最近のテレビ番組は程度が低い。アニメはマンネリだし、ドラマは魅力的な要素がかけている。バラエティー番組なんか、最悪だ。(といいつつも番組作りに今も携わっている私だが)
まあ、あの事件がおきてから、みんな大いに考えるようになったが。

その事件は、ルックスに問題のあるタレントを短い時間の中で猛獣と戯れさせて(ほとんど戦わせてだったが)笑いをとる番組を生放送している間に起こった。この番組PTAからの猛反発を食らっていたが、視聴率は40%という異常な数字で、製作者である番組側は全く耳を傾けなかった。
当時私は私はこの番組のMAミキサーをやっていた。

事件当時の番組の内容は、円形水槽の中に、小太りのお笑い芸人・ボットン滑川と肉食性のわにを戦わせるというものだった。彼は昨日別のテレビ局の健康番組のめたボリック・シンドローム特集にゲストとして出ていたのを私は知っている。

「これまで傷ありで生き延びてきたけど、今回は無傷なんでしょうかね」
製作スタッフ最年少である、メイクの茂田井がプロデューサーの大久保にこう尋ねるのを私は聞いた。
「ああ、仮に怪我したとしてもせいぜいかすり傷さ。」
大久保は自信満々に答えた。もちろんそんな保証はどこにもないと私は思った。


「どうなるんでしょうかね、ボットン滑川とワニのミドリいう組み合わせは。」
女性MCは男性ゲストにたずねた。
「こりゃボットンさんはひいひい言いながら這い出てくるんじゃないでしょかね、何せミドリちゃんが筋肉の塊だとすると、ボットンは脂肪の塊同然ですから。」
ゲストはぼんやりした口調で答えた。
私の耳にはこの発言の後に、観客の笑い声が聞こえた。
ボットン滑川は、シュノーケルもボンベもつけずに海水パンツ一丁で水槽の中へ入っていった。
「乙木(おとぎ)君、準備はいい?」
タイムキーパーの中井はこう尋ね、私はうなづいた。


スタジオの皆がカウントダウンをしだした。
「5,4,3,2,1…」
0!と言った時点で私はブザーを鳴らした。緑は水中の檻から出てきて滑川の顔面に頭突きした。
ぐぶんという滑川が水を飲み込む音と、体躯が水槽にぶつかる音が重なった。
滑川は鼻血を出しながら水槽の上を指差していた。
「み・ず・か・ら…で・た・い………のか?」
意識していなかったのだが、私はそうつぶやいていたそうだ。
「まだ一分しかたってない!我慢しろ!」大久保はそう叫んだ。
「ピンチになるときが一番面白いんだよ」大久保は私に向かってにやりと笑った。
「でももうすでにピンチじゃないすか!」茂田井が突っ込んできた。
「新入りは黙ってろ!」
ADの西田が滑川にカンペでその旨を伝えている間に、ミドリは傷だらけの滑川の海水パンツを後ろから引っ張っていた。水槽の中はうっすらと赤くなっていた。
パンツはブチンという音を立てて伸びただけですんだ。周囲からは笑い声が聞こえた。その時私は彼の様子がおかしいことに気づいた。目が異様に鋭い。まるで野獣だ。

彼はすぐにミドリに突進したかと思うと、大口を開けるミドリの上あごを無理やりそらせたのが、私には見えた。
ボゴンというどえらい音を立てて、水槽の中が赤いもやに覆われた。
もやは晴れることはなかったが、水槽にはミドリがピクリとも動かぬまま浮いていた。観客はざわめいていた。
スタッフが駆けつけ、滑川を引き上げようとしたその時だった。
「ぐぅぅぅ…」
水面から顔を出した滑川から聞こえてきた声や表情は、野獣そのものだった。
「ぐぁうっ!!」
怯えるスタッフの1人ののど笛に滑川は噛み付いた。
その様子を捕らえていたカメラの視界の一部が血に染まった。
他のスタッフ達も滑川を止めに入ったが、振り解かれてしまった。観客は悲鳴を上げて避けていった。1カメの御厨は血まみれのまま滑川を追い、西田はキャスター式のカメラを怪力で観客席の一番後ろまで持ち上げながら滑川を挟んでいった。
滑川は、西田の存在に気づくと、彼をカメラに乗せたまま落としていった。カメラの方はガタガタガタっと階段を駆け下りたあと、ごしゃっという悲鳴を上げて最期を遂げた。彼は観客席に投げ飛ばされていた。柔道をやっていなかったら死んでいただろう。

私が救急車を読んだりしている間に、男性ゲストと観客の一人が食べられた。
どうしたらいいのかと、観客の一人はおろおろしていた。こっちにむかってるぞ、と御厨の声がした。
そんな中ふと私はミドリのいた檻に目をつけた。檻は水中にはない。口をあけて帰ってこない囚人を待っている。鍵は御厨が持っていたはずだ。
私はスタジオへ向かった。
「おい乙木君!」大久保が私を止めようとした。
「もうこの番組の面目はつぶれている。今は事態をよくするほうが先だ。」
「まさか乙木君!?」中井も私をとめようとした。
私はただ、振り返って笑顔で手を振った。

滑川はやってきた私ののど笛に噛み付こうとしたが、投げ飛ばされた。しかしそれでおとなしくなる奴ではない。すぐに立ち上がって、私に襲い掛かった。私は水槽まで走っていった。
ザボン。私が飛び込むと、奴はそれに続いた。水は血のにおいがした。
グブグブグブ…。奴が呼吸するのが聞こえる。
私は檻に向かって、泳いだ。奴の顔が見えた。血まみれの野獣のようだった。
私は檻の中に入った。奴もそれに続いた。
私が出ようとしたら奴も続こうとした。私は檻をバンと閉めた。
「いまだ、鍵を閉めろ。」
大慌てで御厨が鍵を投げた。私は受け取ると、鍵を閉めた。奴は出してくれと暴れた。
私はそんな叫び声を聞きながら、力がないことに気づいた。そして、めまいを覚え、水槽の中へ落ちていった。

 

あのあと、私は翌朝病院で目を覚ました。警察や消防が来たこと、番組が打ち切りになったこと、私が他の制作プロダクションへ異動になったことを茂田井から聞いた。
滑川はどうなったのか、私は知らない。でも理性がなくなったかミドリと入れ替わったかのどちらかであるということは考えられる。

私は今、アニメの音響監督をやっている。とてもいい仕事だ。

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